「アメリカのショッピングモールといえば、ゾンビ映画の象徴」
ゾンビから逃げた末に立てこもる、といった場面を想像する方も多いはず。
そんなショッピングモールに住める時代が来ました!
ショッピングモールが直面する苦境
突然ですが、アメリカのショッピングモールは苦境に立たされています。
一部の不動産調査会社からは、モール内のすべての主要な米国のデパートの半分以上が2021年末までに完全に閉鎖されるという予測までされるほど。
アメリカでの話ではありますが、日本でも物理的な店舗が大きな打撃を受けている、ということは想像に難くないでしょう。
アメリカで始まったこのイノベーションはなぜ始まったのか。
そして日本でも起こりうるのでしょうか。
それを知るため、まずはその原因を探っていきましょう。
eコマースへの移行
ほとんどの方は、Amazonや楽天市場といったeコマース(ネット通販)を利用したことがあると思います。
まして、ECサイトでの購入の方が多い!なんて方も少なくないはず。
これは、経済産業省のデータからも見て取れます。
(下記、経済産業省HP「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(2021年7月30日)」より引用)
まずはこちら
BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)
あれ、去年より減ってる、、?
ようにも見えますがよく見てください、減っているのは緑の「サービス分野」のみ。
物販系分野(青)とデジタル系分野(赤)はかなり増えています。
このことは3つの分野ごとの推移をみるとわかりやすいです。
BtoC-ECの市場規模及び各分野の伸長率
それぞれの分野ごとの前年度比が見て取れます。
1番右の欄を見てみると、物販系は21.71%増、デジタル系は14.90%増とかなりの増加率となっています。
方やサービス系は36.05%減とがなりの減少量です。
こちらは一体なぜなのでしょうか。
サービス系分野のBtoC-ECの市場規模
この表は、サービス系分野の中でさらに細かくカテゴリー分けして増減の傾向を表した表です。
こちらも1番右の欄を見てみると、
旅行サービス(60.24%減)
飲食サービス(18.03%減)
チケット販売(65.58%減)
の3項目が大打撃を受けているのが分かると思います。
原因は、そう、コロナです。
新型コロナ、そして緊急事態宣言等も相まって、旅行はしづらくなり、飲食店の経営は難しくなり、イベントも行えない状況。
これらがサービス系分野における市場規模の減少につながっている、というわけですね。
ここまで見てきた通りサービス系の一部を除いて、eコマースへの移行は大幅に進んでいるといえます。
新型コロナによる外出機会の減少
先ほども見た通り、新型コロナにより旅行、飲食、イベント関係は特に大きな影響を受けています。
これは皆さまも体感しているところでしょう。
そして外出がしづらくなった結果、いつもは店舗で購入していたものもネットで買う、という選択を取り入れている方も多いはず。
その結果、実店舗はかなりの苦境に立たされている、というわけですね。
もちろん、ECサイトを活用することは全く悪いことではなく、実店舗のあり方が問われる時代になってきた、ということでしょう。
そしてアメリカでも同じような状況が起こり、特にショッピングモールが影響を受けている。
そこで新しい在り方を求めた結果が、冒頭の「ショッピングモールに住む」につながっていく、というわけです。
ショッピングモールが集合住宅に
上記の理由から空き店舗が増え、倒産まで追い込まれ始めたアメリカのショッピングモール。
その起死回生のための一手が「集合住宅となり、住宅市場に参入する」ということでした。
実際にマンション化していくにあたり、どのような付加価値をつけているのか、実例をもとに見ていきましょう。
アメリカで最古のショッピングモール、アーケードプロビデンス
アメリカはロードアイランド州プロビデンスの中心部に位置する、アーケードプロビデンス。
建てられたのはなんと、1828年とアメリカ最古のショッピングモールです。
そんな歴史あるショッピングモールがとった戦略は、「店舗も併設した住環境」でした。
具体的には、下記のようになります。
〇 2,3階には48室の住戸を配置
〇 1階は既存設備を活かしつつ、レストラン、コーヒーショップ、ウィスキーバー、カジュアルダイニング、小売店を配置
雨に打たれずに買い物ができ、しかも歴史ある建築に住める!という付加価値を付けたレジデンスとして人気を博しているそうです。
ショッピングモールに見る日本とアメリカの違い
ここまで、アメリカでのショッピングモールについて見てきましたが、それでは全く同じことが日本でも起こるのでしょうか?
結論から言うと、必ずしも後追いとなるとは限らない、ということ。
ここでの話としまして、下記記事を参考にさせていただきました。
「日本とアメリカのマーケット環境を比べてみる」事業用不動産の専門情報サイト インフォニスタ
細かく見ていくと、歴史の長さや各テナントとの契約形態の違い、というところも見えてくるのですが、購買行動の違いが大きいようです。
日本人とアメリカ人、ショッピングの仕方の違い
そもそも、日本とアメリカには大きな違いがあります。それは人口と人口密度。
アメリカの人口は日本の約2.5倍ですが、人口密度(可住地面積)は1/20程度です。
そして、日本は国土のおよそ7割が山間部で、残り3割に1億人以上の人間が住んでいる。
ここから見えてくるのは、「日本は比較的、商業施設と住宅が近接している」ということ
この違いが特に顕著に表れているのが食品スーパー。
日本の場合、近くに食品スーパーのある方が多く、スーパーを冷蔵庫代わりにほぼ毎日買い物に行くという消費行動まで可能なほど。
しかし、アメリカは国土が広いため、週に1~2回、何kmも車を走らせて買い物に行くという購買行動が一般的です。
こういった違いから、eコマースへの移行速度に違いが生じているようです。
ただし、これまで見てきた通り日本でもECサイトへの移行は進んでいて、新型コロナでそれは加速しています。
そして郊外型のショッピングモールであれば、アメリカと似た状況でもあるでしょう。
そのため、アメリカで始まったショッピングモールのリノベーション。
日本では郊外型のショッピングモールから影響を受けていく可能性が高い、とも言えるでしょう。
今回はショッピングモールにフォーカスして見てきたため、同じことが起こるとは限らない、という結論にはなりましたが、実店舗のあり方が問われているのは変わりません。
ただただECサイトにすべての購入体験が移っていくのか、実店舗と組み合わせることで新たな価値をつくっていけるのか、今が大きな境目なのかもしれませんね。
今回の原文はこちら
Will Abandoned Shopping Malls Soon Become Residential Buildings?