気にしている人はほとんどいないであろう「床スラブのこれから」。
ですが、実は建築業界を変えうる可能性を秘めています!
まずは次の数字を見てください。
▶︎世界で2番目に使用されている物質「コンクリート」
▶︎世界CO2総排出量の約10%はコンクリートの製造等から排出
▶︎今後30年間に世界中で建設される建築の床面積は推定3000億m²
▶︎10階以上の高層ビルのほとんどが床が総重量の40%以上を占める
世界的にみても鉄筋コンクリート造の建物は多く、それぞれの階の床をつくるためにはほとんどが鉄筋コンクリートを使用されています。
そして今後もコンクリートの需要は伸びると予測されています。
ですが、そのコンクリートは結構なCO2を排出していて、今のままではあまりサステナブルではありません。
▼コンクリートについてまとめた記事はこちら▼
コンクリートは持続可能になるのか
この状況を変えるため、コンクリートに代わる材料や構法の開発も進む一方、
「高層ビルの約40%の重量を占めている「床」をつくるのに必要なコンクリートを減らせれば大きな効果があげられるのではないだろうか?」
という思いから、実は世界でさまざまな研究が進められている分野が「床スラブのこれから」なわけです。
では、床スラブに必要なコンクリート量を減らすにはどうしたら良いでしょうか。
今回は、コンクリートの3Dプリントを使い、効率的に強度を発揮する床スラブをつくるプロジェクトをみていきます!
必要なコンクリートを75%カットする「Thin shell」
「Thin shell」は、ACORNという研究チームが開発している、同じ耐久度を発揮するコンクリートスラブに比べて、コンクリートの使用量を約75%、建設における炭素排出量を60%削減も削減できる、新しい床スラブです!
ACORN・・・バース大学(イギリス)、ケンブリッジ大学(イギリス)、ダンディー大学(スコットランド)の構造エンジニア、数学者、製造専門家といった多分野にまたがる研究チーム
まず基礎知識として、コンクリートは圧縮に強いのですが、逆に引っ張ったり、横方向に曲げたりする力には弱いという特徴があります。
そして従来のコンクリートスラブは、コンクリートを均一な厚みの平らな板状に成形したものなのですが、この形状だと上に人が乗るとスラブを曲げようとする力が働くことになります。
そうすると、コンクリートは曲げる力に弱いのでより多くのコンクリートが必要になり、曲げる力に強くするために鉄筋を入れて補強してあげる必要が出てきます。
これが「建設業界の常識」だったわけですが、その常識を変えるのが「Thin shell」です!
©︎University of Bath
「Thin shell」の形状は断面的に見るとアーチ状になっていて、この形状は上からの力を横に流していきます。
すると、上からの力は「曲げる力」ではなく、コンクリートが得意な「圧縮する力」に変わります。その結果、得意な力に対してであれば、コンクリートは少なくて済む!ということになります。
そして、そんな自由な形状を3Dプリントが可能にしました!
▼建築の3Dプリントを含めた「デジタルファブリケーション」の紹介はこちら▼
デジタルファブリケーションと建築の今
一般的なスラブは、これまでの「合板で型枠をつくってコンクリートを流し込む」施工方法では合理的だったけれど、3Dプリントというテクノロジーを施工に取り入れたことで、「Thin shell」のような、もっと合理的なスラブの作り方が生まれたわけです。
もっと「Thin shell」について知りたい!という方はこちら
→https://mag.tecture.jp/culture/20220309-thin-shell/
©︎University of Bath
新しいテクノロジーが、これまでの常識をくつがえすのはワクワクしますね!
これからもこういった未来をつくるテクノロジーを随時紹介していきます!!